クラシック半券ギャラリー

2001年10日24日(水)

朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団・2001(秋)名古屋演奏会
”朝比奈隆氏最後の公演”


チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ:小山実稚恵)
チャイコフスキー:交響曲第5番

2001年10月25日筆
今年2回目の名古屋遠征。前回は2月のブルックナー8番であった。その時は満員だったようだが、この夜の3階席などはスカスカの状態であった。東京と大阪に挟まれた名古屋はどっちつかずの土地柄なのだろうか?まぁ、同じ愛知県芸術劇場大ホールではホセ・クーラのリサイタルが開かれていたたので、こちらへお客さんが流れてしまったのかもしれない。
開演時間になってもなぜかオケのメンバーが全員揃わず、パラパラと入ってくる。開演時刻より10分くらい経ちやっと音合わせ。珍しく舞台向かって左手のドアより、ソリストと朝比奈さんの登場。朝比奈さんの足取りが重い、ヨタヨタした感じであった。

そんな不安の中でチャイコフスキーのピアノ・コンチェルトがはじまる。指揮も何回か空振りしてからはじめたのではないか?ホルンの叫びのテンポの遅さ。それからソリストも遅いテンポにしたがった。愛聴しているホロビッツ&トスカニーニのCDの1.5倍くらい遅い感じ、チャイコフスキーの「悲愴」のようなイメージで進む。第一楽章の最後の和音もゆっくり、こんな終わりだっけ?という感じで、じっくり聴くことができた。第二楽章の中間部はイメージどおりの速かったが、2,3楽章間で若干の間をおきフィナーレがはじまる。まぁまぁ速いテンポではあるがじっくりした音作りのイメージは変わらず。ただ「くるみ割り人形」のようなチャイコフスキーらしさが感じられたのは新鮮。重厚に盛り上がり終わる。ソリストの大きな拍手。ソリストは何度も何度も呼び出されたが、朝比奈さんはずっと指揮台の上にいた。どうしようもなく?ソリストが朝比奈さんの手を取って退場させる。ソリストと朝比奈さんとステージより下がる前にオケを解散させた。なおも拍手が続くがステージ上を歩く朝比奈さんの姿は痛々しかった。

15分の休憩後、やはりオケの集まりが悪い。音合わせの後に、ステージ向かって左側の扉が開き何やら会話の声がして(私の記憶では最初は支えられながら)ヨタヨタしながら朝比奈さんの登場。本当にチャイコフスキーのシンフォニーを最後まで振りとおせるのか心配になる。
ほとんど左手は指揮台に手をついたまま。右手だけで小さく振る。重い重いチャイコフスキー。第二楽章をクライマックスとして、途中から背筋を正せずに聴けない音楽となってきたような気がする。朝比奈さんの意図を汲んでいる大阪フィルの最大限の素晴らしい演奏だったと思う。
最後の和音が鳴り終わらないうちから拍手がはじまった。朝比奈さんはコンマスとヴァイオリン奏者二人に支えられながら指揮台を降りる。毎回お馴染みの最前列の弦楽器奏者との握手は欠かさなかったが、立っているのもつらそうな様子。事務局の方がチェロ奏者最前列あたりに位置して退場する朝比奈さんに付き添っていた。

ステージより下がっても拍手は続き、事務局の方がステージに現れ”お疲れのために登場できない”旨のアナウンスがあり、オケに対して盛大な拍手が贈られ、演奏会はお開きとなった。朝比奈さんの体調が心配であった演奏会であった。あのような体調でも振り続けた朝比奈さん、そしてそれについていったオケに感銘を受けた。私にとっては阪神大震災直後のコンサート以来の凄演を感じた。

追記(2002年01月02日筆)
このコンサートの後、朝比奈隆氏は一度も公演の指揮台に立つことなく、2001年12
月29日夜に逝去されました。慎んでご冥福をお祈りいたします(合掌)
追記2(2003年01月28日筆)
このコンサートのライブCD(チャイコフスキー交響曲第5番のみ)が「朝比奈隆追悼文集
(大阪フィルハーモニー協会・2002年12月発行)」に添付されております。詳細は大阪
フィルまでお問い合わせください。
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