クラシック半券ギャラリー

2001年12日30日(日)

若杉弘指揮大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」


ベートーヴェン:交響曲第9番
(出演者)
指揮:若杉弘(当初、朝比奈隆氏予定)
独唱:菅英三子、伊原直子、福井 敬、多田羅迪夫

2002年01月02日筆
2001年12月29日夜、当初このコンサートを指揮予定であった朝比奈隆氏は93歳で逝去された。このニュースを知ったのは本公演のために関西方面へ出発しようと思っていた矢先。関西への移動中の新幹線の車内で、数々の演奏をふと思い浮かべながら、電光板ニュースでの死去のニュースを眺めていた。
会場のフェスティバルホール内にも「朝比奈氏逝去、事前の予告どおり指揮は若杉弘、曲目変更なし」の内容の張り紙があり重苦しい雰囲気が漂っていた。入場口ではマスコミが並んでいる観客達へカメラを向けていた。
開演時間が少し過ぎオーケストラが入場、「黙祷」のアナウンスが流れ若杉氏も姿を現し、客席も皆起立し朝比奈さんへの黙祷が捧げられました。若杉氏は一度、袖へ下がりあらためて登場、指揮台に立ち、第9がはじまりました。
古楽器風というか若杉さんらしい締まった丁寧な音楽を聴くことができた。ときおり大きく横を向き楽器を煽る。第1楽章再現部のティンパニーはしっかりと音譜を刻み、第2楽章のスケルツオ第2主題では木管にホルンを重ねず、第4楽章冒頭もオリジナル楽譜どうりではなかった。このあたりは朝比奈さんの演奏と同じだが、スケルツオ後半の繰り返しを省いことと合唱、ソリストを2,3楽章間に登場させたのは個人的にはいただけない。左右にヴァイオリンを分けておき、左奥のコントラバス、チェロ、右奥にヴィオラ配置の古楽器風なら尚更のことである。
演奏が終わりカーテンコールがが続き、合唱がすべて下がっても拍手が続いた。恒例の「蛍の光」の合唱を期待していたのだろうか、それとも舞台上に朝比奈さんを見たのだろうか。。。指揮者が再度登場することもなく、やがて拍手は静かになっていった。大阪の空にはきれいな月が輝いていた。結局、フェスティバルホールで朝比奈さんの第9、「蛍の光」を聴くことはできなかった。これからもできない。数々の力強い演奏を聴かせてくれた朝比奈さん、ありがとう。そんな気持ちで胸がいっぱいでった。
その日に宿泊した京都での翌日の京都新聞の一面トップは朝比奈氏逝去の記事であった。
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