クラシック半券ギャラリー

1999年01月23日(土)

新国立劇場 「カルメン」
 


フリッツ・エーザー新校訂アルコーア版(1964年)
演出:グスタフ・クーン

カルメン:坂本 朱
ドン・ホセ:フランチェスコ・マルカッチ
エスカミーリョ:稲垣俊也
ミカエラ:佐藤美枝子
グスタフ・クーン指揮 東京交響楽団

1999年01月24日筆

日本のオペラ公演ではチケットがすぐ売れる演目と言えば、そう「カルメン」ですね。今年の東京では来日も含めて3つぐらいはあるでしょうか。正直、食傷気味にならないですか?

さて新国シーズン・オペラとしての「カルメン」。サントリーホール・オペラでお馴染みだったクーンさんの演出。前奏曲の途中から幕が開き意味ありげな、バレエの登場。このバレエによる表現手法は3幕2場の闘牛士の行進・幕切れまで徹底されて使用されていました。私はおもしろく思ったけれど、このあたり、ベーシックな表現を期待していた方にとっては、好き嫌いが出そうなところです。

また、時代設定を1940年代ごろに移したのも同じく。でも「カルメン」は本来の時代設定では浮いた感じですが、私としては現代的な女性の先取りだと思います。そうすると時代を現代により近づけた方が理解されやすいと思います。ドン・ホセも最後は”ストーカー”だしね。昔からストーカーってあった?昔からあったといえば”客席のウェーブ”って昔からあったのかな?3幕2場でこのシーンはちょっと違和感あり。

違和感といえば、この公演は「セリフ入りのアルコーア版」を使用していました。ギロー版(グランド・オペラ版)で親しんだ私にとっては、戸惑いました。曲と曲の間がブツブツ切れてしまうな感じで。でもこれが初演に近いそうで、これからはこの版の使用が多くなるでしょう。3幕1場などもっとコミカルであれば、きっとこの版が活きてくるでしょう。

話が演出中心になってしまいましたが、簡単に出演者の感想を。まずオケが開放的な演奏に感じられて良かった。(まぁ、危うい所もあったようですが)カーテンコール時も指揮者がステージに上がってきたところで、オケのメンバーが指揮者に向かいスタンディングオベーションしてたのも好印象。きっと関係がいいのですね。

主役の坂本朱さん、マルカッチさん、期待の佐藤美枝子さん。健闘でしたが、個人的にはイマイチ個性的という感じはしませんでした。それよりも盗賊?一味の方が、演出の問題もあると思いますが、なかなか良かった。心に残る一味になりそうです。

今年、はじめの新国シーズン・オペラ。芸術監督の方針ではベーシック路線のはずでしたが、この程度はまだベーシックなのでしょうか?一応、?をつけておきます。個人的には非常に楽しめた公演なので文句はいいません。

次は「天守物語」ですが、まだチケットが残っているようです。土日の2日間にか公演しないにも関わらず。演目によって売れ方が全然、違うのですね。トホホ。


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