クラシック半券ギャラリー

1999年07月11日(日)

朝比奈隆の軌跡1999


シューベルト:交響曲第7(8)番「未完成」
シューベルト:交響曲第8(9)番「グレート」

指揮:朝比奈 隆
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
1999年07月12日筆

一度は聴いてみたかったあこがれの地、大阪での朝比奈 隆さんのコンサート。ザ・シンフォニーホールには、はじめて足を運びました。サントリーホールに比べて、ちょっと小ぢんまりとした空間でした。朝日放送の録画用のカメラが数台ステージに載っていました。(8月下旬に朝日放送にて放映予定とのこと)

このプログラムは、私にとって忘れられないものです。阪神大震災の直後、東京での都響との演奏会がこのプログラムだったのです。「売り上げの一部は寄付金・・・・」というようなアナウンスが流れ、演奏された2曲。「未完成」はまるで、葬送行進曲のように重苦しく聴こえました。「グレート」もシューベルトの流れるような歌というよりは、もっと重量級な感じがしました。

「未完成」は、無理な力が抜けたものだと感じました。もちろん決して軽い演奏ではありません。くり返しも行い、特に金管の音が朝比奈サウンドを感じさせてくれます。これも魅力です。

さて「グレート」。冒頭のトウトウとしたホルンからはじまり、そして序奏もタンタンと進む。第1主題に移り変わる一瞬まで、決して焦ることはなく充実した内容が素晴らしい。ソナタ形式前半の繰り返しの部分もはじめて聴いたような感覚で新鮮。音楽は焦らないのに熱くなる。そして最後に冒頭の主題が強奏で戻ってきたときには、感動で目が潤みそうでした。

その後も緊張感のある密度の濃い充実した内容。特に第2か3楽章で、ベートーヴェン9番第3楽章後半のような主題がコダマするようなチェロ部分がハッキリ聞こえたのには感動。その後にビオラをハッキリ響かせたのにも感動。ブラームス1番でもこのような部分がある。このような部分も朝比奈さん指揮の演奏の魅力。

第4楽章も充実の内に進み、最後に程よく伸ばされた和音まで、本当に充実した内容でした。「グレート」は好きな曲ですが、ここまで素晴らしい大建造物の交響曲だとはじめて感じました。本当に「グレート」です。

そしてスタンディング・オヴェーション。微笑ましい姿が素敵でした。
今年、91歳になる朝比奈さん。これからも頑張ってください。

朝比奈さんの指揮者を見てると自分も頑張らなくてはと思います。


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